妊娠中の薬

妊娠中の薬服用で障害児が生まれたりする?

お腹の中の赤ちゃんに、何かあったらどうしよう…妊婦は誰もが一度は不安になったことがあるかもしれません。現在は医療が進歩しており、出生前診断も身近になりました。

そんな中で、薬を服用したいけど赤ちゃんに影響があることが心配で飲めないという方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、薬によってお腹の赤ちゃんに影響が出るのかを説明します。

障害児が生まれる原因は?

赤ちゃんが先天性異常、何らかの障害を持って生まれてくるのは、100人に2人くらいです。赤ちゃんの先天性異常には、先天性神経疾患、先天性筋疾患、血液疾患、免疫異常、先天性代謝異常、奇形など様々な種類があります。

このような先天性異常が起こる原因は、大きく分けて二つあります。一つは遺伝要因です。遺伝要因とは、染色体異常や、変異遺伝子による遺伝病、多因子遺伝病等であり、未然に防ぐことはできません。

もう少し具体的に簡単に説明すると、人間には目や肌の色、髪の性質などを決める約20,000~25,000の遺伝子があります。赤ちゃんの染色体は、父方と母方の染色体が23ずつで形成されますが、受精時にその遺伝子の配列が崩れたり、両親のどちらかに欠陥遺伝子があると先天性異常を発症する可能性が高くなります。

そして、もう一つが環境因子です。環境因子とは、たばこ、アルコール、放射線、大気汚染、母体の状態、感染症等があり、その環境要因の中の一つに薬があります。

先天性異常が起こる約90%は、遺伝因子と言われています。そして、残りの約10%が環境因子です。さらに、薬が原因で引き起こされることは約1%と言われています。よって、薬が原因で先天性異常が起こるのは、赤ちゃん1万人に2人くらいです。


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薬がどのようにして赤ちゃんに影響するの?

妊娠中は、薬を飲むと赤ちゃんに影響があることはほとんどの方が認識していると思います。では、母親が飲んだ薬は、どのようにして赤ちゃんに影響するのでしょうか。

薬は、飲むと体内で溶けて血液中に入ります。血液中に入ることによって薬は効果を示します。その後、母親の体内の血管を通して体中をめぐり、胎盤を通って赤ちゃんの体内に入ります。

赤ちゃんは、からだの機能が未熟なため、体内に入った薬を外に出すことがなかなかできません。そこで、赤ちゃんの体内に薬が蓄積して薬の影響が出てしまいます。

しかし、実際はすべての薬が赤ちゃんの体内に届くわけではありません。母体の血液に含まれる薬が、赤ちゃんへ行く場合は「血液胎盤関門」を通り抜ける必要があります。

この血液胎盤関門は、薬などの赤ちゃんに影響のあるものが入らないように、分別しているところです。薬によっては、この血液胎盤関門を通り抜けることができなかったり、通り抜けることができてもごく微量のものがあります。

よって、飲んだ薬すべてが赤ちゃんの体内に入り、影響を与えるとは限りません。妊婦が飲める薬と飲めない薬があるのは、このためです。

また、催奇形性などの先天性異常が起こるリスクの有無は、薬を開発するうえでテストしなければいけない決まりになっています。そのため、そのようなリスクがある薬は妊娠中は飲んではいけないとされています。

どんな薬は飲まない方がいいの?

では、どのような薬が先天性異常が起こる可能性があるのでしょうか。具体的に例をあげましょう。

・カナマイシン、ストレプトマイシン(抗生物質)
 →聴力障害、非可逆的第Ⅶ脳神経障害(顔面神経)

・レニベース、ニューロタン(高血圧薬)
 →腎障害、肺低形成、頭蓋変形

・サリドマイド(現在はほぼ使われていないが、催奇形性試験を始めるきっかけとなった薬)
 →内臓奇形、四肢欠損

・ボンゾール(子宮内膜症薬)
 →女児外性器の男性化

・デパケン、セレニカR(てんかん薬)
 →二分脊椎

・ワーファリン(抗凝固薬)
 →中枢神経系の先天性異常

・フェノバール(てんかん薬)
 →口蓋裂、口唇裂

こちらに示したのは、ごく一部の例です。薬によって様々な報告があるので、妊娠中に薬を服用する際は、医師や薬剤師に相談しましょう。

また、薬だけではなく、ビタミンAにも注意が必要です。ビタミンAを過剰摂取すると、催奇形性のリスクがあります。もちろん、適度に摂取することは大切ですが、妊娠時期にはサプリメントなどで過剰に摂取することは避けましょう。

上記以外にも、先天性異常が起こるリスクは少ないが、赤ちゃんの発育を妨げる薬もあります。そのような薬にも注意しましょう。

また、これらの薬を服用したからと言って、必ず赤ちゃんに影響が出るわけではありません。妊娠中でも、治療上必要だと医師が判断した場合は、これらの薬を継続して服用することもあります。

自己判断で服用したり、中止したりせずに医師の指示にしたがって正しく薬を使用することが大切です。

注意するべき時期は?

では、妊娠中はずっと薬の服用に気を付けた方がいいのでしょうか。もちろん、気を付けた方がいいですが妊娠週数によって、赤ちゃんへの影響の大きさが変わります。そこで、妊娠週数別の赤ちゃんへの影響を見ていきましょう。


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超初期(~1カ月)

この時期に服用したお薬も、ほとんど影響しません。妊娠前と同様で、長期にわたって体内に残るお薬は影響を及ぼす可能性がありますが、医師から指摘があります。

この時期の、薬による影響は「all or noneの法則」と言われています。これは、薬の影響を受けた場合は、着床できなかったり(本人も気づかないような)流産になってしまいます。

そうならなかった場合は、些細なダメージを受けたとしても細胞レベルで修復されて正常に戻ります。そのため、妊娠が継続できていればこの時期に薬を飲んでいたとしても影響がなかったと考えて大丈夫です。

初期(2~4か月)

赤ちゃんの臓器は妊娠初期に作られます。そのため、この時期(特に妊娠2か月)が最も注意が必要です。2か月頃から、人間の大事な器官である脳や神経、心臓が形成され、その後胃腸、手足、性器、口蓋が形成されます。

4か月頃には形成がほぼ終了し、発達していく過程になります。そのため、臓器が作られるこの時期は胎児の薬への感受性も高いです。この時期に、奇形を作る可能性の高いお薬は避けましょう。

市販薬では催奇形性頻度の高いお薬はほとんどありませんが、市販薬含め使用する場合は、医師または薬剤師に相談しましょう。この時期に飲む薬は、催奇形性の危険度の低い薬剤に限り、治療上必要不可欠な場合のみにしましょう。

ただし、妊娠初期は妊娠に気づいていない方も多いです。この時期に、何日間か風邪薬を飲んでしまった、胃薬を飲んでしまったからと言って絶対に影響がでるとは限りませんので、過度に心配しなくてもいいでしょう。

持病があり、継続的に薬を服用している方で妊娠を希望している場合は、妊娠週数をしっかりと数えて医師に相談すると安心です。

中期、後期(5カ月)

中期以降は、比較的安全な時期です。胎児の臓器はほぼ完成してきているので奇形の心配はほぼなくなります。

ただし、この頃からお薬の種類によっては臓器の機能に影響を与える可能性が出てきます。また、赤ちゃんへの影響だけではなく、子宮収縮による早産や羊水過少症が起こる薬があるので注意しましょう。

薬ではありませんが、精製アロマオイル等でも子宮収縮作用をもつもの(ラベンダー等)があるので、使用するときは注意しましょう。また、赤ちゃんの発育に影響がでる薬で代表的なものはNSAIDsと言われる解熱鎮痛剤です。

ロキソニンやイブプロフェンなどがあります。妊娠後期に使用すると、胎児の腎臓の機能を低下させたり、早期動脈管閉鎖、肺高血圧症になる恐れがあります。これらの薬には特に注意しましょう。

妊娠中は、赤ちゃんに何かあったらどうしようと不安になることは多いですよね。もちろん避けられるリスクは避けたいです。

しかし、過度に心配して治療上必要な薬を飲まずに母親の体調が治らなかったり悪化してしまっては、赤ちゃんにも影響が出てしまいます。さらに、そのような心配からストレスがたまることも妊娠中はよくありません。

正しい知識をもって、適切に対応しましょう。


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