【不妊治療をやめる理由】

不妊治療は多くの人にとってつらく、長い道のりです。不妊治療=希望、「どうしても赤ちゃんがほしい!」という一心で地道に治療を続けていくのです。日本では今や6組に1組のカップルが不妊治療を経験していると言われています。

私を含め不妊治療中だった友達の中には、その道のりの途中で子どもを授かった人もいれば、子どもを作ることをあきらめた人もいます。治療をやめた理由は人それぞれですが、主に精神的、肉体的、経済的理由で決断する人が多いです。

【精神的理由で断念した】

長い不妊治療のせいで、子どもがほしい気持ちが強くなりすぎて周りがみえなくなり、自分の殻に閉じこもって人の意見を聞かなくなったため、パートナーとの夫婦生活が義務的になり仲が悪くなってしまったという人。

本来なら2人で乗り越えていくべきところが、一人で抱え込んで、精神的に限界に来てしまい不妊治療をやめたそうです。不妊治療を始めると、担当医から「この日に性交してください」と検査結果に基づいた妊娠しやすい日の提案があります。

先生は決して「この日以外はしないでください」と言っているわけではないのですが、少しでも確率を上げたいと思う女性は、精液の濃度が薄まるなどを気にしてやはり排卵日前後以外の性交は控えようとしますし、男性側も長い期間続くと精神的に繊細になりその気がなくなって結果的に回数が減ってしまうということがあります。

また、毎月生理が来ると、「また今回もだめだった」と落ち込むことになります。「次こそは!」と思えているうちは良いのですが、何度も何度も繰り返すうちに精神的にまいってしまう人は多いです。

パートナーとの関係を大事にしなくなると喧嘩も増えます。些細なことで言い争ったり、ネガティブな思考に陥りやすくなります。真面目な人ほど自分を責めてしまい、「毎日栄養に気を付けた食事、体調管理もばっちりなのになぜ?」と思ってしまいます。

また酷くなると、妊娠に成功した人が羨ましくなり、お腹の大きい人や走り回る小さい子を見ると「なぜ私だけが?」と益々落ち込んでしまうこともあります。


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【肉体的、経済的理由であきらめた】

不妊治療は個々の月経周期に沿って行われることが多いので、クリニックに通っている間は肉体的、時間的制約を受けます。先生からは「この日に検査をしますので来てください」「ちょっと太りすぎですね、1カ月〇〇のペースで〇キロ落としてください」などの指示があり、生活がそれに支配されてしまいます。

仕事をしている人は、時には妊活のために仕事を休まなければならないことも。時間の融通が利く職場ならよいですが、同僚や上司の理解が得られないなどでその調整がストレスになり、「仕事をやめるか、不妊治療をやめるか」という決断を迫られる場合があります。

先が見えない中、「仕事をやめて治療に専念しても結果的に妊娠できなかったら」とクリニックに通うのをやめた人もいます。また、経済的にも大きな負担を伴います。友人の一人に2年半で約800万つぎ込んだ末、治療を断念した人がいます。

彼女は「その時は妊娠することが唯一のゴールだったから、赤ちゃんが来てくれるなら別に高いとも思わなかった。今考えるとちょっと金銭感覚がおかしくなっていなかも」と言っていました。

不妊治療費といってもピンキリで、初めから高額になるわけではありません。初期の検査段階では保険適応で1回の費用は数千円~1万程度。特殊な検査や手術、人工授精でも1万~3万ほどなどそれほど法外な額ではありません。

それが体外受精や顕微授精にステップアップするとなると、1回30万~60万と桁が跳ね上がります。より良い環境での治療に臨むため、評判のよい遠くのクリニックへ転院を繰り返す人もいます。

そうするうちに旅費が積もり積もって数十万にもなってしまうことも。国や自治体から高額生殖医療の補助金が出る場合がありますが、女性の年齢が42歳まで、所得制限、回数制限などがあり、条件を満たしていないと申請が通りません。

【自分で期限を決める】

いつまで続ければいいの?大切なのは自分なりの「やめどき」を設定しておくことだと思います。「〇歳になるまで」「今から3年間」「体外受精7回まで」など自分が納得できる理由が付けられる期限を決めておけば、「まだ可能性があるかも」とずるずる続けてしまうこともありません。

期限は担当医のアドバイスを聞きつつ、自分の精神的、経済的負担とのバランスをみて落としどころを見つけます。一番のポイントはパートナーと話し合って2人が「納得できる理由付け」をすることです。

「やめどき」に正解はありません。上で紹介した治療を断念した友人は不妊治療に疲れてきたころ、「子どもはいたらいいなとは思うけど、妊娠は唯一のゴールじゃないし、子作りに必死になりすぎて君との関係が薄くなるのはもっとやだな。

一生2人でもよくない?」というパートナーの一言でギアチェンジができたと言います。つまり、子どもを持つことよりパートナーとの関係を大事にすることを理由に治療をやめることにしたそうです。


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【やめるメリット、残るうしろめたさの解消】

不妊治療をやめた人の多くは、精神的苦痛が治療中に比べて格段に減ったと言います。何度も病院に通わなくてよくなった、夫婦の関係が改善した、金銭的に余裕ができた、両親や友人に気を使わせなくて済むなど今まで生活を圧迫していたものから解放されます。

問題は「あんなに精神的苦痛を伴って時間やお金をかけたのに妊娠出来なかった」といううしろめたさをどう処理するかです。ポイントは、「なぜそれほどまでに子どもがほしかったのか」本当のところを見つめ直すこと。

結婚したからには子どもを産んで幸せな家庭を夢見ていた人、両親に孫の顔を見せてあげたかった人、女に生まれたからには生物として子どもを産みたいと思う人、それが「普通」のことだからという人。

それぞれ想いがあって治療を続けてきたはずですが、多様化する現代において、妊娠は義務ではありませんし、法律で定められたことでもありません。子どもを持っている人がみな幸せとも限りません。

そもそも妊娠はスタートであってお腹の中にいるのはほんのわずかな時間。子どもはやがて巣立っていき、また2人の生活がやってくるのです。そして数十年後には必ず別れが来ます。

そう考えると、子どもを持てなかったうしろめたさに苛まれるよりも、短い人生のうち今後の生活をどう充実させるかを考えるほうが、色々な方面から見て良いような気がします。言うは易しでそのうしろめたさはすぐに消えるものではありませんが、強い悲しみが数年かけて薄らいでくるように、時間が解決していくものだと思います。

【やめたら自然妊娠する?】

不妊治療をやめたら妊娠したという話をたまに聞きますが、結論から言うと確率はそれほど高くないと思います。なぜなら不妊治療をやめて妊娠する人の多くは、治療中の「ストレス」などによって妊娠が阻まれていたことが原因で、体の機能(卵子や精子、卵巣など)に大きな問題はないという大前提があるからです。

日頃からストレスが多い人やクリニックで「原因不明」と言われた人はもしかしたら治療をやめた途端精神的にリラックスし、生活が安定して自然妊娠に至ることがあるかもしれませんが、年齢の高い人や長期間の治療で機能に問題があると診断された人は過度な期待はしないほうがいいかもしれません。

ただ、現在の医療が完璧ではないので、個々の状態を完全に調べ上げることはできません。例えば40代の親戚の女性は36歳から不妊治療を始めて38歳で4回の顕微授精の末第1子を妊娠。クリニックでは第2子はほぼ無理だろうと診断されていましたが、その後、何の治療もなしに41歳で第2子を自然妊娠しました。理由はわからなかったそうです。

【やめた後の生活】

2人で新たなスタートを切ろうと決めた人たちは、その後どんな生活をしている?今まで治療費に充てていたお金を好きな海外旅行に充てて満喫している人もいれば、転職して会社を興した人もいます。

「なんといっても今後子育てに時間やお金を取られることもないので、人生設計がかなり自由になったよ」と先に紹介した友人は話してくれました。子どもがいればな、という気持ちはきっとまだ持っているとは思いますが、少なくとも治療中の彼女よりずっとポジティブで明るくなったと思います。

行動範囲も大幅に広くなりどんどん新しいことにチャレンジしていて気持ちがいいです。そんな彼女を見て妊娠は本当に唯一のゴールではないと感じました。